ゲーム・映像業界でフリーランスを5年経験し、現在は正社員として都内大手ゲーム会社に勤務するMさん(36歳)。
職種はCGデザイナー(モーション)。
この記事では、そんなMさんに
- なぜフリーランスになったのか?
- なぜフリーランスを辞めて社員になったのか?
- フリーランスの良い点は?悪い点は?
などについてお聞きしました。
実は、インタビューを行った私マローン(@ゲムカン)もフリーランスの経験が2年ほどありますが、5年の経験があるMさんとは質の違うお話を伺うことができました。
Mさん プロフィール
専門学校卒業後、映像制作会社にて海外ドラマ(アニメシリーズ)の開発に携わる。
社員として数年間勤務したのちに退職。その後、フリーランスになり数多くの映像・ゲーム会社と契約業務を行う。
5年間ほどフリーランスを経験したのちに大手ソーシャル系ゲーム会社へ社員として入社。
現在は同ゲーム会社でセクションリーダーとして活躍中。
※本記事はPR広告を含みます
はじめに

よろしくお願いいたします。
なぜフリーランスになったのか?

はい、実は学校の卒業制作でアニメーション部門の大賞を受賞することができまして、卒業制作展でそのままスカウトしてもらえました。笑

本当にレアケースだと思うんですが、僕の他に同級生でもう1人一緒に入社することになったんです。
今思えば、当時入社した映像会社は大きなプロジェクトを進めている最中だったので、若手でも可能性のある人材ならとりあえず採用しておけ!みたいな風潮があったんだと思います。
翌々年から新卒社員は入ってきませんでしたから。笑

本当にそうです。
でも、いつ来るか分からないタイミングに備えて、常にポートフォリオを準備しておくことが大切だと思います。
僕の場合は転職志向が高かったので、仕事しながら常に自分のポートフォリオをアップデートしていました。

まぁ、ほとんどの人がそうですよね。
僕は常にやっておかないと不安になるタイプなので。
フリーランスだろうが何だろうが、常に準備をしておくことが大切だと思います。
フリーランスのメリットは?

はい、まず1つ目は映像会社がとてもキツかったことです。笑
ブラックとは言いたくないですが、勤務状況は過酷でした。日本の映像会社ってほとんどが受注した仕事を受ける下請け会社なんですよ。
自主制作している映像会社ってかなり限られると思います。
うちの場合、発注元は海外の大手アニメ制作会社だったり国内のゲーム会社がほとんどで、稀にTVCMなどの案件もありましたが、結局どれも下請けです。
そうなると決められた厳しいスケジュール内でパッケージを納品しなければならないんです。
最も過酷な時は会社に2泊3日が数週間続いたときですね。笑

今も現役で働いている友人の話だと、最近はそこまで厳しいスケジュールはないようですが、納品期日が迫ると深夜作業が続くそうです。
どちらにせよ、自分は過酷なスケジュールの中で働き続けるのは厳しいと思ったので、フリーランスになってある程度自由に働こうと決意したのがきっかけです。
フリーランスの魅力は、好きなときに働いて好きな時に休めることです。
もちろん、休んでいる時はお金は入ってこないので豪遊できるわけじゃないですが、3ヶ月くらい仕事をせずにゆっくりしたこともあります。
フリーランスは契約した会社の労働条件に従えばいいので、契約終了後になれば自由です。
年間を通して、働く時と休む時を差別化して生活できるのが最高ですね。おかげで海外旅行もたくさん行きました。

何年も仕事をしていると、誰かしらの紹介で仕事が入ってくるんですよ。笑
フリーの経験が長くなればなるほど、その会社のマネージャークラスの人と仲良くなったり、他社との繋がりも出てきます。
なので休んでても特に心配もせずにのんびり過ごす時間が取っていました。
でもフリーランス仲間で話していると、ふと怖くなる瞬間があったり、今後も仕事を受け続けられるかという恐怖を持っている人も多いです。病気や怪我をしてしまったら無収入になる可能性もありますからね。
この辺はメンタルの話になってくると思います。
個人事業主?法人?フリーランスになったら選ぶ選択肢

はい、個人事業主です。
法人化は検討していませんでした。映像・ゲーム業界での法人化は非常に難易度が高いですし、組織化するとなると膨大な費用がかかるので現実的ではないと判断しました。
多くのフリーランスの人は個人事業主ですが、開業届を出さずにフリーランスになっている人もいます。
そうした人はフリーランスになりたくてなってるのではなく、転職時に正社員としてでなく業務委託として契約せざるを得ない人ですね。
僕のように、フリーランスになろうと決意したのであれば、個人事業主として開業したほうが良いと思います。
フリーランスの「独立」について
会社を辞めてフリーランスになるということは独立するということ。
独立には「個人事業主」(開業届を出し個人で活動)と「法人」(株式会社として企業)の2種類があり、フリーランスの場合は個人事業主を選ぶケースが圧倒的に多い。税務署で書類を提出するだけで即日完了する。
開発現場での話

分かりました。
フリーランスと正社員で感じる違い

はい、そもそも会社のスタッフか社外の人かという違いですね。
その影響はとても大きくて、例えば社内の重要な会議、社員全体会議、収益などに関する会議にフリーランスは参加できないケースがほとんどです。大手になればその違いは明確です。
社外の人に会社の重要情報や業績見込みを開示するのは問題があるので当然のことです。

ただ、人によってはそれを社内差別と感じてしまう人もいるみたいです。
僕はそうは思いませんが、たしかに某最大手ゲーム会社だとフリーランスは作業場所が違いましたし、直属の上司以外とはほとんど話せませんでしたから。笑
ただ毎日作業をしに行っているという感じでした。

ん〜、やはり給与面、福利厚生は全く異なります。

月額報酬は良いが保証が無く管理も大変
フリーランスは社員に比べて月額報酬が高いと思います。
キャリア10年、大手企業でフリーランスとして働くなら月額40~60万円が相場ではないかと思います。もちろん業界や会社の規模によって報酬は大きく異なりますけど。
ちなみに私は映像会社で月額50万円、大手ゲーム会社で月額60万円〜の報酬を得ていました。これ以上はズバ抜けた能力がないと厳しいですね。
優秀なプログラマーの友人は月額100万円の報酬を受けていたと聞いたことがあります。
ただし、この報酬から国民年金など保険料の支払い、住民税の支払いなどすべてを自分で行うことになるので、ざっくりと月額報酬から-10万円くらいを考えておくのが無難です。もちろんボーナスもありません。
フリーランスが大変なのは、正社員なら自動で天引きしてもらえる税金を自分で支払わなければならない点です。
とにかくフリーランスはお金周りのことを全て自分でやらなきゃならないのが大変ですね。
よって納税の意識が強くなります。笑
特に面倒なのが3月の確定申告です。
毎年3月の確定申告で多額の税金を納める

はい。自分で申告してました。毎年2月、3月は仕事どころじゃなかったですね。笑
かなり面倒くさいし、想像以上に税金を支払うことになります。
正社員や契約社員だと、毎月の給料から税額が差し引かれているので確定申告は不要ですが、フリーランスはこれを1年分まとめてやらなきゃならない。
だいたい「確定申告やろう!」と決めてから1週間くらいかかりますね。
とにかく4月の納税時期にお金を貯めておかないと、支払いで大変な目に合います。笑
ちなみにマローンさんは法人化されてますが、自分で確定申告してますか?

確定申告とは
確定申告は1年間の所得にかかる税金を計算し、国に納める税額を報告する手続きのこと。
フリーランスの場合、会社から受けた1年間の報酬を合計し、経費(電車代やソフトウェア代金、その他諸々)を差し引いた額に、一定の税率を掛けて計算する。
報酬の交渉がしづらい

こればかりは難しいですね。ハッキリいって言い値なので。
僕は一定額の基準を設けてから契約交渉を行っているので、会社側がそれをOKとすれば契約完了です。もちろん高すぎるとして破棄されたこともあります。
フリーランスの報酬は、会社のプロジェクト稼働状況、予算、業績によってかなり変わると思います。
また、3ヶ月単位で契約していくのが一般的ですが、更新時に報酬アップを望むのはかなり厳しいですね。
一度契約した報酬がほぼ1年間続くと考えても良いでしょう。
仮に特別な技術を持っており、その会社に欠かせない存在である場合は別ですが、そうした人材はすぐに社員として抜擢されるのが通例です。
当然だが出世はない
フリーランスは会社の一員ではないため、役職に就くことができないのも特徴です。
社内会議などへの参加も不可能になりますし、結局は専門スキルを持った作業員であることに変わりはありません。
やはり会社の一員ではないという疎外感はあります。
私がいた大手ゲーム会社の場合ですが、社内全体会議があったある日、100名近いスタッフが会議に参加したために、フロアに残っている人材はフリーランスと派遣社員の数名でした。
なんとなくポツンと落ち着かない状態で1~2時間ほど仕事をすることになるんですよ。
逆に自由すぎてYouTube見てたかも。笑
フリーランスはあくまでも会社の補充要員であるという一面があります。スキルによってはプロジェクトを引っ張る存在として契約することもありますが、ほとんどは作業員になると思ったほうが無難です。
結局、ゲーム会社の正社員になった

はい、フリーランスとして契約していた会社のマネージャーから「正社員として働かないか?」とお誘いを受けたことです。
最初は正直迷いました。
でも、その会社は居心地が良かったし、頑張って出世してプロジェクトを動かしてみたいと思ったんですよ。
そこが一番の決め手ですね。会社のスタッフとして頑張ってみようと。
入社するには簡単な試験(SPIなど)もありましたが、面談等はかなり優遇された状態で行われました。上長が推薦状を書いてくれていたので、ほぼ内定が決まった状態で面談している感じでした。

本当に良い会社だと思います。
正社員になったことで、安定した給料、福利厚生など人生の安定を得ることができましたし、収入もほぼ変わっていません。
プロジェクトが終わればしっかりと長期休暇がもらえるので、フリーランスの時と同じように海外へ行くことも可能です。
なぜ今までフリーランスにこだわっていたのか分からないくらいですよ。笑
ゲーム業界でフリーランスになるのはオススメ?

ある程度経験を積まれた方でしたら、一歩踏み出してチャレンジすることはとても大切だと思います。
僕は正社員→フリーランス→正社員というステップを踏んできましたが何一つ後悔していません。
その時々で経験してきたことは、すべて自分の力になっています。
ずっと正社員で働いてきた同世代のスタッフよりも広い世界を見ましたし、多くのコネクションも持っています。
もし、今勤めている会社が辛くて辞めたいなら、退職してフリーランスになるのを経験してみるのも良いと思います。
数ヶ月でも社員とは違う世界を知るってとても面白いですよ。
そしてその経験はどこかで役立つハズです。

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