ゲーム会社への就職・転職を目指す方なら、開発部がどのような構造になっているの気になりますよね。
すでに現場での職務経験がある方なら分かると思いますが、ゲーム開発部は一般企業と少し違う組織図になっています。
そもそも社外に触れる人が限られるため、内部事情がよく知られていないのも特徴です。
良く言えば開発に集中できる環境ですが、悪く言えば閉鎖的とも言えます。
会社の規模によって組織図は異なりますが、この記事で紹介する内容は大手ゲーム会社を中心に一般的なゲーム開発部の組織図を職種別に紹介します。
また、組織図に合わせて、それぞれの職種にはどのような昇進ルートが待っているのかも解説します。
開発部の中身を知りたい方、これから就職・転職を狙っている方はぜひ参考にしてください!
ゲーム会社の開発職の組織図は?
ゲーム会社は一般的な企業と同じように部長、課長、係長というような組織構成になっていますが、とりわけ開発部となると名称が変わります。
役職の名称を置き換えるとこのような感じですね。(※会社によって異なる場合も)
- 部長、次長 → プロデューサー
- 課長、室長 → ディレクター、マネージャー
- 係長、主任 → 各セクションリーダー
そして、中間管理職に当たるのはディレクター職、マネージャー職以上になります。
分かりやすく図にしてみました
ゲーム会社では、開発プロジェクトごとに上記のような組織が構成されます。
大手になるとプロジェクトがいくつもあり、複数のゲームタイトルが同時に開発されています。
ですので「ゲーム会社が年間に販売しているゲームの数=プロジェクトの数」とも言い換えられますね。
ただし、プロジェクト規模が小さい場合は、開発業務を“外注”という形で下請け会社に依頼していることも多々あるので、「あのゲーム会社はタイトル数が多いから、出世のチャンスも多いかも?」という考えで会社を選ぶのはリスクが高いのでやめておきましょう。
プロデューサー、ディレクター、マネージャーは狭き門ですが、各セクションリーダーは経験と努力しだいで20代でも十分に狙える役職です。
入社したらプロジェクトの組織図をよく理解し、自分が目指すべきポジションを明確にしておくと良いですね。
大手ゲーム会社と中小ゲーム会社には決定的な違いがある
基本的にゲーム会社は完全分業制ですが、大手と中小企業では形態が違います。
大手の場合はほぼ完全分業と言えますが、規模の小さな会社や下請け会社になると完全分業とは言えない会社が多いのも現実です。
これはプロジェクトに掛けられる資金力・人材が違うため仕方がないこと。
中小企業、下請け企業の開発部で働く場合は、キャラクター+背景デザインや、モーション+リグ+イベントシーン全般など、複数セクションの仕事を兼業するのが当たり前だったりします。
自分は複数の職種はできない・・と思っても、若手クリエーターならこのような経験は専門外の仕事を学ぶチャンス。その後のキャリアを大きく変える経験ができるかもしれません。
一方、大手ゲーム会社でもプロジェクトによっては兼任の作業が発生することもあり、必要に応じて人員配置のバランスには差があります。
私も経験上、大手ゲーム会社のプロジェクトで兼業したことがあります。モデリング、リグ、アニメーション、オープニングMOVの動画編集。MayaとXSI(当時のツール)、AEとPremiereの4ソフトを使うという過酷なプロジェクトでした。
ゲーム会社の職種を知る前に、このような分業制度になっていることも知っておくと良いですね。
ゲーム会社の開発職にある職種一覧
それではゲーム開発職の職種について紹介します。
希望する職種以外でも、ゲーム開発にはどのような職種が関わりあっているのか?を知ることもできるのでじっくり読んでみてください。
シナリオライター
ゲームのストーリーを作るのがシナリオライターであり、世界観からキャラクター設定、シナリオプロット(設計図)から台本(セリフ)など、物語そのものをテキスト文章として作り上げます。
簡潔に言うと小説家や放送作家に近い仕事ですね。
開発現場では、シナリオが完成してなくともプロジェクトがスタートすることがほとんどです。
そのため、開発チームのスピードに合わせて、必要なシナリオを書き上げるスピード力も求められます。
文章力・構成力があるのはもちろん、様々な修正依頼に対応する判断力・忍耐力も必要になります。
シナリオライターになるためには、自身の作品が必要不可欠です。ゲームストーリーに限らず普通の小説作品でも問題ありません。商業ライターとしてのライティング経験や実績があると就職に有利になることもあります。
ただし、大手ゲーム会社に新卒入社となるとハードルはやや高めです。コンクールでの受賞実績の有無なども問われるでしょう。
そのため就職・転職エージェントサイトに登録しておき、仕事が来るチャンスを待つのが良いでしょう。
プランナー
プランナーはゲームの企画、プロジェクト進行管理、リリース後の運営管理などゲーム開発を統括する仕事です。そのためプランナーの昇進先はディレクター → プロデューサーになるケースが多いですね。
テレビ業界の職種で言うならADが近いポジション。いつか自分のゲームを作りたい!と考えている方ならプランナーを目指すのが成功法です。
開発現場では「企画」と呼ばれることが多いプランナーの仕事は、プロジェクト全体を把握しながら、デザイナーやプログラマーと密接に関わりを持ちます。
コミュニケーション能力、トラブルへの対応力、折衝能力など人と関わることが多いため、人間性を強く問われる仕事でもあります。
常にロジカルな考え方で最短ルートの解決法を見い出すことが要求されますし、時には最終判断を下すのもプランナーの仕事のひとつ。開発スタッフからの“信頼”が出世のカギになるでしょう。
プランナーは文系・理系問わずに様々な学歴を持っている方がいます。
自分のゲームを作りたい!と強い志を持っている方はプランナーを目指してみましょう。
プログラマー
ひとえにプログラマーと言えど、開発現場には様々な職種のプログラマーがいます。
- ゲームプログラマー
- 開発環境エンジニア
- サーバープログラマー
ゲームシステムそのものから、効果音やサウンド、デザイナーが使う自社開発支援ツール、運営のためのサーバーサイドなど、プログラマーの仕事は多岐に渡ります。
「C言語」や「C + +」などのプログラミング言語、ゲーム業界でよく使われるUnity、Unreal Engineなど専用プラットフォームを使って開発が行われます。近年ではAI技術やそれに対応したCGツール開発が盛んに行われているのも特徴ですね。
仕事はプログラミングすることだけではなく、他セクションの要望に対しシステム的に「できる・できない」の判断をする能力と、できない場合の代替案を出せるかどうかの能力が重要です。
優秀なプログラマーはこのあたりの判断能力が優れています。
プログラマーは業務をとりまとめるリーダーに昇格したあと、部署・課を統括するマネージャーへキャリアアップするのが昇進ルートですが「スペシャル職」としての役職がある会社もあります。
主に大手ゲーム会社や、技術専門性の高いゲーム会社にありますが、スペシャル職的ポジションに昇進することで部長クラスの給与を得られることも不可能ではありません。
デザイナー
ゲーム開発職で最も細かく分業化されているのがデザイナーです。
- アート/キャラクターデザイン
- UI/UX
- キャラクターモデリング
- 背景デザイン
- モーション
- リギング
- エフェクト
この他、イベントシーンやオープニングムービー制作など、横一列に様々なセクションが存在します。
(※イベントシーンはモーション班が担当、OPムービーは映像会社に外注するのが一般的です)
各セクションには必ずリーダーが存在し、その下にプロジェクトに応じた人数のデザイナーが配属されます。
デザイナーは正社員、業務委託、アルバイト、派遣など様々な雇用形態の方が働いており、プロジェクトの予算によって状況は変化します。
実務ではリーダー同士が綿密な打ち合わせを行い、プランナーと仕様の確認を行ったのち、デザイナーに指示が出されて作業は進められますが、デザイナーは作業員ではありません。
メンバー同士がセクションを越えてアイディアを出したり、逐一確認をしながらクリエイティブに仕事をするのがデザイナーの仕事です。
いくら技術が優れていても、コミュニケーション能力や判断能力が低ければキャリアアップは望めません。
デザイナーの出世ルートはセクションリーダー、マネージャー、ディレクター、プロデューサーなど広範囲に渡り、特別な高い技術があればスペシャル職に就くことも可能です。
その反面、開発職で最もメンバーが多いのもデザイナー職ですので競争は熾烈になります。
サウンドクリエーター
開発部では「サウンド」や「サウンド班」と呼ばれ、ゲーム内で流れる音楽制作をする仕事になります。
BGMや効果音、イベントシーン、時にはテーマソングの制作をすることもあり業務内容は多岐に渡ります。
後世に残るゲーム音楽ってあると思いますが、それはサウンドクリエーターが作り上げたものが多いですね。
ゲームによってはCDやストリーミングサービスで配信されることもあるので、通常の音楽活動では得られない喜びがあるのも特徴です。
デバッガー
デバッガーは発売前のゲームをテストプレイし、バグを見つける仕事です。
開発部からの指示通りにプレイを行い、問題がないかを逐一報告するのが主な業務です。
ゲームすることが仕事になるので、ゲーマーには最高の職業に見えますが・・・全く遊びではありません。
問題が起こった箇所の画面をキャプチャして不具合内容をテキストに起こし、1日数百件にもなるバグを見つけ、開発部で修正されれば再チェック→完了報告という気の遠くなるような作業を繰り返します。
バグ報告のツールはゲーム会社、プロジェクトによって異なりますが、チェック期間中は毎日とんでもない量のバグ報告が上がってきます。
デバッガーは普通のゲーマーとは違い、職業としてプロの仕事です。
国内にはデバッグだけを専門に扱う会社もり、プロのデバッガーを目指すならそのような会社を目指すのがよいでしょう。
業務委託契約(フリーランス)やアルバイトで働くこともできますが、その多くは転職エージェントサイトからの登録になります。
まとめ
ゲーム会社の開発部にはどのような職種があるか分かりましたでしょうか。
また、その職種に就いた時に今後のキャリアアップのための方法もある程度お分かりになったと思います。
技術職であるがゆえに、スキルがあれば出世できると思っている方が多いようですが、実際の現場ではそう断言できません。
むしろコミュニケーション能力のある人や、トラブル時でもロジカルに対応できる人が出世するケースが多いですね。
もちろん、その裏側には基本的な技術ノウハウを知っていることが前提になりますが、キャリアアップを目指すなら技術だけに目を向けていてはいけません。
これからゲーム会社への就職・転職を目指す方にとって、本記事が参考になれば光栄です。